ECサイトのAI活用は何が変わる?

ECサイトにおけるAI活用というと、商品説明文や広告文を作る機能を思い浮かべるかもしれません。

しかし、今後のAI活用は、文章作成だけではありません。

大きく分けると、次の2つの方向へ進んでいます。

ECサイトを運営する人が使うAI

一つ目は、ECサイトの運営者を支援するAIです。

例えば、AIに次のような質問をします。

EC担当
EC担当

今月の売上を教えて。


先月より売上が伸びた商品は?


在庫が少なくなっている商品は?


発送待ちの注文は何件ある?


リピーターがよく購入している商品は?


最近増えている問い合わせは?

これまでは、ECサイトの管理画面を開いたり、CSVを出力したりして調べていた内容です。

今後は、AIへ話しかけるだけで必要な情報を探し、状況をまとめてもらえるようになると考えられます。

商品を購入する人が使うAI

もう一つは、商品を探す人を支援するAIです。

例えば、利用者がAIへ次のように依頼します。

購入者
購入者

予算1万円以内で、海外の取引先に渡せる日本らしいギフトを探して。

AIは、複数のECサイトや商品情報を確認し、条件に合う商品を比較して提案します。

将来的には、利用者の確認を取りながら、商品をカートへ追加し、購入手続きまで進めることも想定されています。

つまり今後のECサイトでは、人が見やすく買いやすいことに加えて、AIが商品や店舗の情報を理解できることも重要になります。

ShopifyはAIを標準機能として取り込んでいる

Shopifyでは、すでにAIを活用した店舗運営が始まっています。

中心となるのが「Sidekick」というAIアシスタントです。

Sidekickは、Shopifyに登録されている商品、注文、顧客、売上などの情報をもとに、店舗運営を支援します。

例えば、次のような使い方が想定されています。

  • 売上状況を確認する
  • 売れている商品を探す
  • 商品説明文を作る
  • キャンペーン案を考える
  • ストアの設定変更を手伝う
  • 外部アプリの情報を確認する

一般的な生成AIとの違いは、Shopifyの店舗情報を踏まえて回答できることです。

またShopifyは、AIが商品を探し、カートへ追加し、購入手続きへ進むための仕組みも整備しています。

将来的には、利用者がECサイトを直接訪問せず、ChatGPTやGeminiなどのAI上で商品を探し、そのまま購入する機会が増える可能性があります。

EC-CUBEもVer.4.4でAI対応機能が追加される

EC-CUBEも、2026年8月に公開予定の「EC-CUBE 4.4」で、AIとの連携を意識した機能を追加する予定です。

具体的には、次のような方向が示されています。

  • AIが商品情報を理解しやすくする
  • AIから商品を検索できるようにする
  • AIから在庫や受注情報を確認できるようにする
  • AI経由の商品購入に向けた仕組みを整える
  • 新しいPHPやデータベースへ対応する

EC-CUBEも、これまでのように人が管理画面を操作するだけではなく、外部のAIと接続して利用することを想定したシステムへ進化しようとしています。

ただし、ShopifyとはAI機能の提供方法が異なります。

Shopifyでは、Shopifyが用意したAI機能を管理画面から利用します。

一方、EC-CUBEでは、ChatGPTやClaudeなどの外部AIとEC-CUBEを接続し、自社の環境や業務に合わせて利用する形が中心になると考えられます。

EC-CUBEの場合は、特定のAIモデルに依存することなく、自社専用にフィットさせる柔軟なAI活用が可能になりそうです。

AI時代のShopifyとEC-CUBEを比較

ShopifyとEC-CUBEは、どちらもAI対応を進めていますが、その特徴は異なります。

Shopify EC-CUBE
ShopifyがAI機能を用意する 外部AIからEC-CUBEと連携する
新しい機能を利用しやすい 導入や設定、検証が必要
サーバー管理が不要 サーバーやシステム管理が必要
標準的なEC運営に強い 独自業務や独自機能に強い
Shopifyの仕様内で運用する ソースコードやデータを自由に拡張できる
気軽にAI活用を始めやすい 自社独自のAI活用を設計しやすい

簡単に言えば、次のように整理できます。

Shopifyは、用意された新しいAI機能を早く利用しやすい。
EC-CUBEは、自社の業務に合わせてAI連携を作り込める。

これからECサイトを作るなら、どちらを選ぶ?

これから新しくECサイトを作る場合は、AI機能だけでShopifyとEC-CUBEを決めるのではなく、今後どのようなEC運営を行うのかを考える必要があります。

Shopifyが向いているケース

次のような場合は、Shopifyが向いています。

  • ECサイトを早く立ち上げたい
  • サーバー管理を行いたくない
  • 社内にシステム担当者がいない
  • 標準機能とアプリで運用できる
  • 海外販売や多言語対応を進めたい
  • Shopifyの新しいAI機能を早く利用したい
  • システムの保守負担を抑えたい

特別な業務や複雑な機能が少なく、一般的なEC運営を行う場合は、Shopifyの方が始めやすいでしょう。

Shopify側がサーバーやセキュリティ、システム更新を管理するため、運営者は商品販売や集客へ集中しやすくなります。

EC-CUBEが向いているケース

次のような場合は、EC-CUBEが向いています。

  • 独自の会員制度がある
  • 顧客ごとに価格や商品を変えたい
  • 独自の送料や決済ルールがある
  • 特殊な受注処理が必要
  • 基幹システムや社内システムと連携したい
  • ソースコードやデータを自社で管理したい
  • 将来的に独自機能を追加したい
  • 自社業務に合わせてAI連携を作りたい

EC-CUBEは、Shopifyよりも柔軟にカスタマイズが可能です。

標準機能やアプリだけでは対応しにくい独自業務がある場合、EC-CUBEのほうが適応しやすいでしょう。

AI機能をすぐ使いたいならShopifyが有利、自由度ならEC-CUBEに期待

現時点では、AI機能を簡単に使い始めるという点ではShopifyが有利です。

Shopifyの共通基盤上でAI機能が提供されるため、利用者側で複雑なシステムを構築する必要が少ないからです。

一方、EC-CUBEは、AIへどの情報を見せるのか、誰が利用するのか、どの業務とつなぐのかを個別に設計できます。

そのため、始めやすさではShopify、自由度ではEC-CUBEという、これまでの違いがAI活用にも表れているといえます。

すでにShopifyを利用している場合はどうなる?

現在Shopifyを利用している場合は、基本的にShopify側の機能更新におまかせすることになります。

サーバーやシステム本体を自分たちで更新する必要はありません。

Shopifyの契約プランや提供地域、利用条件などによって差はありますが、新しいAI機能が利用可能になれば、比較的少ない負担で導入できます。

ただし、Shopifyを使っていれば、何もしなくてもAI活用が進むわけではありません。

例えば、次のような準備は必要です。

  • 商品名や商品説明を分かりやすく整える
  • 商品カテゴリやタグを整理する
  • 在庫や価格を正確に登録する
  • 自社ならではの独自性ある有益なコンテンツを提供する
  • AI活用について顧客情報の取り扱いルールを決める
  • 自動化やデータ活用の運用体制を検討する
  • AIに任せる業務と人が確認する業務を分ける

AIが利用できる情報が整理されていなければ、正しい回答や提案を得にくくなります。

また、どれだけ高機能なAIが搭載されていても、マーケティングやデータ活用に使っていなければ宝の持ち腐れです。

今後はAI活用へのリテラシーとデータ活用の知見の差が、そのまま競合との売上の差になるかもしれません。

すでにEC-CUBEを利用している場合はどうなる?

現在EC-CUBEを利用している場合は、Shopifyとは事情が異なります。

EC-CUBE4.4が公開されても、現在利用しているEC-CUBEへ新しい機能が自動的に追加されるわけではありません。

例えば、現在EC-CUBE 2系、3系、4.0系、4.1系、4.2系、4.3系を利用している場合、それぞれの環境を確認する必要があります。

主な確認項目は次のとおりです。

  • EC-CUBEのバージョン
  • PHPのバージョン
  • データベースのバージョン
  • 利用中のサーバー
  • APIプラグインの利用可否
  • プラグインの最新対応状況
  • 決済システムの最新対応状況
  • 独自カスタマイズの有無
  • 外部システム連携状況
  • セキュリティ更新状況
  • バックアップ体制の有無
  • 保守会社の有無

古いEC-CUBEでは、AI対応を考える前に、サーバーやセキュリティ、決済環境の見直しが必要になる場合があります。

また、新しいEC-CUBEへ変更する場合も、ボタン一つで更新できるとは限りません。

新しい環境を別に構築し、商品、会員、受注などのデータを移行し、デザインや独自機能を作り直すケースもあります。

特にサーバー環境面では、新搭載されるAI機能に、EC-CUBEのAPI環境が必要になるかどうかは要確認です。

現時点から上記の点を確認しておくと対応がスムーズになります。

すでにEC-CUBEを使っている場合の3つの選択肢

現在EC-CUBEを利用している場合、今後の選択肢は大きく3つあります。

1.現在のEC-CUBEを使い続ける

現在のEC-CUBEで業務上困っておらず、必要な保守やセキュリティ対策を継続できる場合は、すぐに移行しなくてもよい可能性があります。

AI機能を使うこと自体が目的になってしまうと、大きな費用をかけても十分な効果を得られないことがあります。

ただし、今後はAI検索やAIエージェントによる購入支援が加速していくと考えられます。

そのため、AI対応(AIエージェントが商品情報を取得・提示するためのフィード出力など)については、現時点から対応方法を検討し始めておくのが良いでしょう。

2.新しいEC-CUBEへ移行する

EC-CUBEの自由度を維持しながら、今後のAIや外部システム連携へ備える方法です。

独自機能や基幹システム連携があり、今後もEC-CUBEを中心にシステムを発展させたい場合に向いています。

ただし、現在のカスタマイズやプラグインが新しい環境で利用できるか、事前調査が必要です。

3.Shopifyへ移行する

独自カスタマイズが少なく、サーバー管理や保守負担を減らしたい場合は、Shopify移行も選択肢になります。

Shopifyの標準機能やアプリで現在の業務を実現できるなら、新しいAI機能へも追従しやすくなります。

一方で、EC-CUBEで実現している独自機能が多い場合は、Shopifyへの移行によって業務方法を変更しなければならない可能性があります。

まずは、現在のカスタマイズやプラグインの仕様や、自社の運用体制の洗い出しが必要です。

ShopifyかEC-CUBEかは、AIだけで決めない

AI対応は、これからのECシステムを選ぶうえで重要な判断材料です。

しかし、AI機能だけでShopifyかEC-CUBEかを決めるべきではありません。

確認すべき項目には、次のようなものがあります。

  • コスト面
  • 保守・サーバー管理体制
  • セキュリティ管理体制
  • 独自カスタマイズの必要性
  • 会員制度の有無
  • 価格や送料の独自ルール
  • 必要な決済方法
  • 受注後の業務体制
  • 外部システムとの連携状況
  • 越境ECの予定
  • 将来追加したい機能
  • AIを何に使いたいのか

「AI機能があるから」という理由だけでECシステムを選ぶのではなく、現在の業務と将来の事業計画に合っているかを考える必要があります。

既存のEC-CUBEは、まず現在の状態を確認する

これからECサイトを作る場合は、ShopifyとEC-CUBEの違いを比較し、自社の事業に合う方を選ぶことができます。

一方、すでにEC-CUBEを利用している場合は、まず現在のシステムがどのような状態なのかを確認する必要があります。

特にEC-CUBEをお使いの場合、次のような状態になっていないでしょうか。

  • EC-CUBEのバージョンが分からない
  • 制作会社との契約が終了している
  • どこがカスタマイズされているか分からない
  • 利用中のプラグインが分からない
  • PHPやデータベースを確認していない
  • バックアップ方法が分からない
  • セキュリティ更新を行えていない
  • バージョンアップ費用の根拠が分からない
  • Shopifyへ移行できるか判断できない

この状態では、EC-CUBEを新しくする場合も、Shopifyへ移行する場合も、正確な費用や作業範囲を判断できません。

古いEC-CUBEの場合、特にセキュリティ状況や、カスタマイズ状況から調査を行う必要があります。

マーケッター
EC Creators Lab.

安心してください!

EC Creators Lab.では、現在運用中のEC-CUBEを調査・状況整理するために「EC-CUBE診断サービス」を提供しています。

診断では、次のような内容を確認します。

診断項目診断内容
現在のEC-CUBEのバージョン利用中のバージョンと、更新・移行の必要性を確認します。
サーバー環境利用中のサーバーと現在の稼働環境を確認します。
PHPやデータベース対応状況やバージョンアップ時の影響を確認します。
プラグイン利用中のプラグインと新環境での利用可否を確認します。
独自カスタマイズ独自機能の内容と移行・保守時の注意点を確認します。
決済や外部システム連携決済システムや外部システムとの連携状況を確認します。
セキュリティ更新状況と対応が必要なリスクを確認します。
バックアップデータのバックアップ方法と復旧体制を確認します。
バージョンアップ時の注意点移行時に確認すべき影響範囲や注意点を整理します。
Shopifyへ移行する場合の論点現行業務・機能をShopifyで実現する際の論点を整理します。
今後のデータ活用やAI連携の可能性データ活用やAI連携に向けた今後の可能性を確認します。

診断を行ったからといって、必ずしもEC-CUBEのバージョンアップを勧めるわけではありません。

現在のEC-CUBEを維持する、新しいEC-CUBEへ移行する、Shopifyへ移行するなど、現在の状態と事業方針に合った選択肢を整理します。

診断結果をもとに、自社対応が可能かのご判断や、保守業者様へ委託する際の要件整理としても、ご活用いただけます。

まずはお気軽にご活用ください。

よくある質問

FAQ・よくある質問
これから小規模なECサイトを始める場合は、Shopifyの方がよいですか?

独自機能が少なく、一般的な商品販売を始める場合は、Shopifyの方が導入しやすい傾向があります。

サーバー管理が不要で、決済やアプリも利用しやすいためです。

ただし、独自の価格、会員制度、受注処理、外部システム連携が必要な場合は、EC-CUBEも検討対象になります。

AIを重視するならShopifyを選ぶべきですか?

AI機能を簡単に利用し始める点では、現時点ではShopifyが有利です。

一方、EC-CUBEは、自社独自のデータや業務に合わせてAI連携を設計できる可能性があります。

始めやすさを重視するか、自由度を重視するかによって選択が変わります。

EC-CUBE 4.4へ移行すれば、Shopifyと同じ機能を使えますか?

ShopifyとEC-CUBEでは、AI機能の提供方法が異なるため、同じ機能になるわけではありません。

Shopifyは、Shopifyが用意したAI機能を利用します。

EC-CUBEでは、外部AIとの接続や権限設定などを、自社環境に合わせて構築する形が中心になると考えられます。

現在Shopifyを利用していますが、何か対応が必要ですか?

システム本体のバージョンアップはShopify側が行います。

ただし、AIが商品を正しく理解できるように、商品名、説明、カテゴリ、タグ、在庫などを整理しておくことが重要です。

また、利用中のアプリや顧客データの取り扱い方針も確認しておきましょう。

現在EC-CUBEを利用していますが、すぐに4.4へ移行すべきですか?

すぐに移行する必要があるとは限りません。

現在のバージョン、サーバー、プラグイン、決済、カスタマイズ、保守状況を確認したうえで判断する必要があります。現在のEC-CUBEを維持する方が合理的な場合もあります。

ただし、AIに見つけてもらう、購入してもらいやすくする、といった対策は必要になってきます。

まとめ

ShopifyとEC-CUBEは、どちらもAI時代を見据えて進化しています。

Shopifyは、SidekickというAIアシスタントを中心に、店舗運営でAIを使いやすい環境を整えています。

また、AI経由で商品を探し、購入するための仕組みも進めています。

EC-CUBEも新バージョンで、AIが商品や受注情報を利用するための仕組みや、AI経由の購入に向けた対応を予定しています。

これからECサイトを作る場合は、次のように考えると分かりやすいでしょう。

  • 導入しやすさや保守負担の少なさを重視するならShopify
  • 独自機能や自社業務に合わせて柔軟にカスタマイズしたいならEC-CUBE

AI時代だからといって、すべてのECサイトが同じシステムを選ぶ必要はありません。

自社の業務や今後の事業計画に合わせて、Shopify、EC-CUBE、現在の環境の継続利用を比較することが大切です。

Shopifyを利用している場合は、商品・コンテンツ・データ活用 などの運用体制を整理することが重要です。

EC-CUBEを利用している場合は、新しい機能を検討する前に、現在のバージョン、サーバー、プラグイン、カスタマイズなどを確認する必要があります。

 

もし、現在のEC-CUBEの状態が分からず、今後の方針を判断できない場合は、まず現状の調査と課題整理から、一緒に始めていきましょう。