今、インバウンドを無視できない理由
インバウンド向けページの話は、単なる思いつきではありません。
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2025年の訪日外客数は4,268万3,600人となり、年間で過去最高を更新しました。
つまり、訪日外国人の増加は一時的な反動ではなく、高い水準で続いている状況です。
消費額を見ても、その流れははっきりしています。
観光庁のインバウンド消費動向調査では、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,559億円、前年比16.4%増となり、暦年として過去最高を記録しました。1人当たり旅行支出も22.9万円とされています。
観光庁「インバウンド消費動向調査2025年暦年(速報)及び10-12月期(1次速報)の結果について」
この数字を見ると、訪日客は単に日本に来ているだけではありません。日本国内でしっかりお金を使っています。
もちろん、その消費は宿泊、飲食、交通、大型商業施設だけに向かうわけではありません。
- 日本らしい商品。
- 地域性のある商品。
- 工芸品。
- アート。
- インテリア。
- 食品。
- ギフト。
- 職人性のあるもの。
- 日本旅行の記憶として持ち帰りたくなるもの。
こうした商品にも、十分にチャンスがあります。
ただし、そのチャンスを受け止めるには、海外のお客様がスマホで見たときに分かるページが必要です。
店頭で商品を見た。でも、日本語の商品名が読めない。公式サイトを開いても日本語だけ。どこで買えるのか分からない。帰国後に問い合わせできるのか分からない。
この状態では、せっかく日本で商品と出会っても、その後につながりません。
だからこそ、越境ECの前に、まずインバウンド向けページが必要なのではないかと思いました。
盲点は「海外客=海外にいる人」と決めつけていたこと
最初に間違えていたのは、海外のお客様を「海外にいる人」とだけ考えていたことでした。
この流れだけを考えていました。
もちろん、これは越境ECとしては正しい流れです。
ただ、海外のお客様は、必ずしも最初から海外にいる状態で商品を見つけるわけではありません。
- 日本に来ているときに商品を見つける。
- 観光中に店舗の前を通る。
- ホテルや旅館で商品を知る。
- 美術館や展示会で商品を見る。
- 百貨店やセレクトショップで偶然出会う。
- 日本旅行中のSNS投稿で知る。
- 友人のお土産でもらって興味を持つ。
こういう接点もあります。
海外向け販売というと、つい遠くにいる人を追いかけたくなります。
でも、よく考えると、すでに日本に来ている海外のお客様がいます。商品とリアルに出会ってくれている人がいます。目の前で興味を持ってくれる可能性があります。
そこを受け止めるページがないまま、遠くの越境ECばかり考えていた。
これが盲点でした。
海外との接点は、店舗だけではない
インバウンドというと、観光客が実店舗で商品を買う場面を想像しがちです。
もちろん、店舗は分かりやすい接点です。
ただ、実際には海外のお客様との接点は店舗だけではありません。
| 海外接点 | 起こり得ること |
|---|---|
| 常設店舗 | 訪日中のお客様が商品を見つけ、後から調べる。 |
| ポップアップイベント | 期間限定の出会いを、帰国後の問い合わせにつなげる。 |
| 展示会・クラフトフェア | 商品や作り手の背景に興味を持ってもらう。 |
| 百貨店催事・ホテル催事 | 偶然の接点からブランドを知ってもらう。 |
| セレクトショップ・委託販売 | 自社店舗がなくても、販売先から公式ページへ誘導できる。 |
| 商品同梱カード | お土産や手土産で受け取った人が公式情報にアクセスできる。 |
| SNS | 日本旅行中や帰国後に、ブランドを思い出してもらう。 |
| 問い合わせフォーム | 海外発送や受注相談を個別に受けられる。 |
こうして見ると、インバウンド向けページは「店舗を持っている企業だけのもの」ではないと分かります。
D2Cブランドでも、工房でも、作家でも、食品メーカーでも、地域の商品を扱う小さな事業者でも、海外との接点は作れます。
むしろ店舗がない場合ほど、英語ページの役割は大きくなるかもしれません。
なぜなら、リアルな店舗がない分、海外のお客様があとから商品を思い出したときに、公式情報へたどり着きにくいからです。
ポップアップで見た。
展示会で見た。
誰かからお土産でもらった。
SNSで見た。
でも、どこで詳しく見ればよいか分からない。
この状態を防ぐために、英語の受け皿ページを用意しておく。
店舗がないD2Cや工房の場合は、「Where to buy(購入できる場所)」だけでなく、
- 「Where to see(実物を見られる場所)」
- 「Upcoming events(今後の出展・イベント情報)」
- 「Online inquiry(オンラインでのお問い合わせ)」
- 「For overseas customers(海外のお客様へ)」
- 「For gift recipients(お土産・贈り物として受け取った方へ)」
のような導線を用意するほうが現実的だと思います。
日本在住の方が海外へ持っていく「お土産・手土産」も海外接点になる
もうひとつ見落としやすいのが、日本在住の方が海外へ商品を持っていくケースです。
たとえば、海外出張の手土産、海外の取引先への贈り物、一時帰国するときの日本土産、海外の友人や家族へのプレゼント、留学先や赴任先へ持っていく日本の商品。
この場合、商品を買っているのは日本在住の方かもしれません。
でも、商品を受け取るのは海外の方です。
つまり、商品そのものが海外に渡ります。
そして現地でそれを見た人が、
「これはどこの商品?」
「同じものを買える?」
「他の商品も見たい」
「海外から注文できる?」
「英語の説明ページはある?」
と思う可能性があります。
このとき、日本語の商品名しか分からない、英語ページがない、問い合わせ先が分からない、という状態だと、せっかく商品が海外で話題になっても次につながりません。
お土産や手土産は、商品が海外に届く自然なきっかけです。
しかも、広告ではなく、人から人へ渡るため、信頼感があります。
だからこそ、商品パッケージ、同梱カード、ショップカード、説明書などに、英語ページへつながるQRコードを用意しておく意味があります。
たとえば、カードには次のように書けます。
- 「Learn more about this product(この商品について詳しく見る)」
- 「For gift recipients(お土産・贈り物として受け取った方へ)」
- 「About the maker(作り手について)」
- 「Contact us from overseas(海外からのお問い合わせ)」
インバウンド向けページは、訪日客だけのためではありません。
日本で買われた商品が、海外へのお土産や手土産として渡ったあとに、現地の人が商品を調べるための受け皿にもなります。
この視点も、越境ECだけを考えていると見落としやすいところだと思います。
海外ECがないニッチな商品ほど、逆に興味を持たれる可能性がある
売り手側からすると、海外ECがないことは弱点のように感じます。
- 海外発送に対応していない。
- 英語サイトがない。
- 大きなブランドではない。
- 海外のECモールでは販売していない。
- まだ海外展開できていない。
こうした状態を見ると、「うちはまだ海外向けではない」と考えてしまいがちです。
でも、海外のお客様から見ると、少し違うかもしれません。
こういう商品は、むしろ「日本でしか出会えないもの」として魅力になる可能性があります。
どこでも買える大量生産品ではなく、現地で見つけた特別なもの。海外のECモールでは探しにくいもの。日本の文化や地域性、作り手の背景があるもの。
そういう商品ほど、海外のお客様にとっては記憶に残りやすいはずです。
ただし、ここで問題になるのが、あとから調べられるかどうかです。
せっかく「日本でしか買えない面白い商品」と思ってもらえても、英語の説明ページがない。ブランド名が検索できない。商品名の読み方が分からない。問い合わせ先が分からない。
この状態では、興味があっても次につながりません。
つまり、海外ECがないこと自体は、必ずしもマイナスではありません。
むしろ、「まだ海外では簡単に買えない、日本で見つけた特別な商品」として価値になる場合もあります。
だからこそ、まずは海外のお客様がその価値を理解し、あとから公式情報にたどり着ける受け皿を用意しておく。
これが、インバウンド向けページの大きな役割だと思います。
Google画像検索で探されたときに、英語ページが出てくる意味
もうひとつ、今の時代ならではの行動として考えておきたいのが、画像検索です。
海外のお客様が、訪日中に見つけた商品を写真に撮る。お土産でもらった商品をスマホで撮る。商品名が読めないので、Google画像検索やGoogleレンズで調べる。
こういう行動は、これからますます自然になっていくと思います。
特に、日本語の商品名や漢字のブランド名は、海外のお客様にとって検索しにくいことがあります。
- 文字で検索できない。
- 読み方が分からない。
- ローマ字表記が分からない。
- 商品名なのか、ブランド名なのか、会社名なのか分からない。
そのとき、画像から検索して、公式の英語ページが見つかれば、かなり強いです。
「あ、この商品だ」
「公式ページがある」
「英語で説明が読める」
「問い合わせ先が分かる」
「他の商品も見られる」
という流れが作れます。
逆に、画像検索で出てくるのが、誰かのSNS投稿だけだったり、古い販売ページだけだったり、関係のない類似商品ばかりだったりすると、せっかく興味を持ってもらっても公式情報につながりません。
だから、インバウンド向けページでは、文章だけでなく画像も大切です。
- 商品写真。
- パッケージ写真。
- 使用シーン。
- ブランドロゴ。
- 作り手や工房の写真。
- イベントで展示している写真。
こうした画像を、英語ページ上に分かりやすく掲載しておくことで、画像検索されたときの受け皿になりやすくなります。
もちろん、画像検索に必ず表示されるわけではありません。
それでも、海外のお客様が「写真から探す」時代になっていることを考えると、英語ページは単なる翻訳ページではなく、画像検索から公式情報へつなげる入口としても考えるべきだと思います。
日本で見つけた商品。お土産でもらった商品。でも、名前が分からない商品。
そういう商品ほど、画像検索されたときに公式の英語ページが見つかる状態を作っておく価値があります。
越境ECとインバウンド向けページは、役割が違う
越境ECは、海外から注文を受けるための仕組みです。
一方で、インバウンド向けページは、訪日中や訪日前後の海外のお客様、または海外で商品を受け取った方に、商品やブランドを知ってもらうためのページです。
この2つは似ているようで、役割が違います。
| 種類 | 役割 |
|---|---|
| 越境ECページ | 海外から購入してもらうためのページです。価格、送料、決済、配送、関税、返品など、購入に近い情報が必要になります。 |
| 問い合わせ導線ページ | 海外販売の相談を受けるためのページです。商品名、数量、国名、問い合わせ内容などを確認します。 |
| インバウンド向けページ | 訪日中・訪日前後、または海外で商品を知った人が、商品やブランドを思い出せるようにするページです。 |
越境ECページは、購入に近い人のためのページです。
それに対して、インバウンド向けページは、まだ購入前、または商品を知った直後の人に向けたページです。
この段階の人に必要なのは、いきなり「Buy Now(今すぐ購入)」ではありません。
まずは、
- これは何の商品なのか。
- どこで見られるのか。
- 誰が作っているのか。
- なぜ日本らしい価値があるのか。
- 海外から問い合わせできるのか。
こうした情報です。
つまり、インバウンド向けページは、海外販売の入口というより、海外のお客様が商品を忘れないための受け皿です。
英語の受け皿がなければ、興味はそこで止まってしまう
たとえば、訪日中の海外のお客様が、ある商品を見て「いいな」と思ったとします。
でも、その場ですぐ買うとは限りません。
荷物になるかもしれない。サイズが合うか分からない。家族に相談したい。ホテルに戻ってから考えたい。帰国後に買えるか確認したい。もう少し詳しい説明を読みたい。
日本人でも、店頭で気になった商品をその場で買わず、あとでスマホで調べることがあります。海外のお客様なら、なおさら慎重になるかもしれません。
問題は、そのときに検索できる情報があるかどうかです。
- 日本語の商品名しか分からない。
- ブランド名の読み方が分からない。
- 公式サイトが日本語だけ。
- 商品説明が日本人向けで、海外の人には魅力が分かりにくい。
- 取り扱い場所や問い合わせ先が分からない。
この状態だと、せっかく興味を持ってもらっても、次の行動につながりません。
「あの商品、何だったっけ」
「どこで見たんだっけ」
「英語の説明が見つからない」
「たぶん海外からは買えないのかな」
そう思われて終わってしまう可能性があります。
これは、本当にもったいないことです。
越境ECを作っていないことよりも、まず「思い出せる場所」がないことのほうが問題かもしれません。
インバウンド向けページに必要なのは、販売機能ではなく、迷わせない情報
インバウンド向けページは、最初から本格的なECページである必要はありません。
むしろ、最初からカートや決済を入れようとすると、話が重くなります。
- 海外配送はどうするのか。
- 送料はどう計算するのか。
- 関税はどう案内するのか。
- 返品は受けるのか。
- 破損時はどうするのか。
- 禁制品はどう確認するのか。
こうした問題が一気に出てきます。
だから、最初のインバウンド向けページでは、販売機能よりも、迷わせない情報を優先したほうがよいと思います。
| 掲載する情報 | 役割 |
|---|---|
| 英語の商品名 | 検索・共有しやすくします。 |
| 商品の簡単な説明 | 何の商品か分かるようにします。 |
| 日本らしい背景 | 価格以外の魅力を伝えます。 |
| 使い方・飾り方 | 購入後のイメージを持ってもらいます。 |
| 取り扱い場所 | 店舗、委託先、催事、イベントなどを案内します。 |
| ポップアップ情報 | 期間限定で実物を見られる場所を知らせます。 |
| 商品画像 | 画像検索やSNS共有から見つけやすくします。 |
| 帰国後の問い合わせ先 | 後から相談できる導線を残します。 |
| SNS・公式サイト | 再接触できる場所を用意します。 |
ここで重要なのは、完璧な英語ではなく、迷わず理解できることです。
- これは何か。
- どこで見られるか。
- どこで買えるか。
- どう問い合わせるか。
- 海外で受け取った人が、どうやって公式情報にたどり着けるか。
このあたりが分かるだけでも、インバウンド向けページとしては十分意味があります。
QRコードでつなげれば、リアルな接点が海外向けの入口になる
インバウンド向けページを作るなら、ページを作るだけでは不十分です。
実際の接点からページへつなげる必要があります。
- 店舗にQRコードを置く。
- 商品POPにQRコードを載せる。
- ショップカードに英語ページのQRコードを入れる。
- 商品に同梱するカードに「For overseas customers(海外のお客様へ)」と書いておく。
- 展示会やイベントで配る資料に英語ページを載せる。
- ホテルや観光案内所に置くチラシにURLを載せる。
こうすれば、店頭や観光中の出会いをWeb上の接点に変えられます。
特に、日本語の商品名は、海外のお客様にとって検索しづらいことがあります。
漢字が読めない。読み方が分からない。ローマ字表記が分からない。似たような商品が多くて公式情報にたどり着けない。
この問題を避けるには、その場でスマホに保存してもらうのが一番早いです。
- QRコードで英語ページを開いてもらう。
- ブックマークしてもらう。
- Instagramをフォローしてもらう。
- 問い合わせフォームにたどり着けるようにする。
これなら、いきなり海外広告を出したり、多言語ECサイトを作ったりしなくても始められます。
遠くの海外ユーザーを探しに行く前に、目の前の訪日客とつながる。
これが、インバウンド向けページの強みだと思います。
ポップアップイベントでは、帰国後の接点を残すことが大切
QRコードの導線は、常設店舗だけでなく、ポップアップイベントとも相性が良いと思います。
たとえば、次のような場所です。
| 場所 | 海外ページにつなげる意味 |
|---|---|
| 百貨店催事 | 期間限定で接点が生まれるため、後から思い出せる導線が重要になります。 |
| 展示会・アートイベント | その場で買わない人にも、作品や商品の背景を後から見てもらえます。 |
| クラフトフェア | 作り手や素材の説明を英語で補足しやすくなります。 |
| 観光地イベント | 訪日客が偶然商品と出会ったときの受け皿になります。 |
| ホテル催事 | 滞在中に見た商品を、帰国後にも確認できるようにします。 |
| 空港・駅周辺イベント | 移動中の短い接点を、Web上の継続接点に変えられます。 |
ポップアップイベントには、ひとつ弱点があります。
期間限定なので、その場で買わなかったお客様との接点が切れやすいことです。
イベントが終わる。
商品名を忘れる。
ショップ名を覚えていない。
帰国後に検索できない。
こうなると、せっかく興味を持ってもらっても、その場限りになってしまいます。
そこで、商品POP、ショップカード、展示パネル、レジ横の案内、配布チラシなどにQRコードを置き、英語ページへ誘導しておく。
そうすれば、
という次の接点につながりやすくなります。
特にインバウンド向けのポップアップでは、その場で売ることだけでなく、「帰国後にも思い出してもらえる状態を作る」ことが重要なのかもしれません。
短期間のイベントでも、英語ページとQRコードを組み合わせれば、その場限りの接客を、帰国後の接点に変えられます。
店舗がないD2Cや工房は、「見られる場所」と「問い合わせ先」を設計する
実店舗を持っていないD2Cブランドや工房の場合は、インバウンド向けページに何を書けばよいのでしょうか。
店舗がある場合は、「Where to buy(購入できる場所)」として住所や営業時間を書けます。
でも、店舗がない場合は、同じ考え方ではうまくいきません。
その代わりに必要なのは、「どこで実物を見られるか」と「どう相談できるか」です。
| 店舗がない場合の接点 | 用意したい導線 |
|---|---|
| ポップアップイベント | 商品POPやショップカードから英語ページへ誘導する。 |
| 展示会・クラフトフェア | 作り手や商品の背景を英語で説明するページへつなぐ。 |
| 委託販売・セレクトショップ | 取り扱い店舗では伝えきれないブランド情報を補足する。 |
| 商品同梱カード | 海外で受け取った人が公式情報を見られるようにする。 |
| SNS | 英語ページをプロフィールや投稿から案内する。 |
| 問い合わせフォーム | 海外発送や受注相談を個別に受けられるようにする。 |
店舗がないからインバウンド向けページが不要なのではありません。
店舗がないからこそ、公式ページで商品の背景を伝え、問い合わせ先を明確にしておく必要があります。
特に工房や作り手の商品は、量産品と違い、背景そのものが価値になります。
- 誰が作っているのか。
- どこで作られているのか。
- どんな素材を使っているのか。
- どんな文化や地域性があるのか。
- どこで実物を見られるのか。
- 海外から相談できるのか。
こうした情報が英語でまとまっているだけでも、海外のお客様にとっては安心材料になります。
お土産・手土産には、英語ページへの入口を同梱する
日本在住の方が海外へ持っていくお土産や手土産の場合も、QRコードの導線は有効です。
たとえば、商品パッケージの中に小さなカードを入れておく。英語の商品説明カードを同梱する。ショップカードに英語ページのQRコードを載せる。ギフト用の説明書に「Learn more about this product(この商品について詳しく見る)」と書いておく。
これだけでも、商品を受け取った海外の方が公式ページへたどり着きやすくなります。
手土産として渡された商品は、受け取った人にとっては「誰かから勧められた商品」です。
広告で見た商品よりも、信頼されやすい可能性があります。
そのタイミングで英語ページがあれば、
という流れを作れます。
これも、いきなり越境ECを作らなくても始められる海外向け導線です。
商品が海外へ渡る可能性があるなら、商品と一緒に「英語で調べられる入口」も渡しておく。
この考え方は、かなり実用的だと思います。
インバウンド向けページは、海外需要のテストにもなる
インバウンド向けページは、単なる案内ページではありません。
海外需要を小さく試すためのページにもなります。
いきなり全商品を英語化する。いきなり越境ECカートを作る。いきなり海外広告を出す。
これらは、それなりに費用も手間もかかります。
でも、主力商品だけの英語ページを作り、店頭やQRコードから誘導するだけなら、かなり小さく始められます。
そのうえで、次のような反応を見られます。
| 見るポイント | 分かること |
|---|---|
| 英語ページのアクセス数 | 海外ユーザーの関心があるか。 |
| QRコード経由のアクセス | 店頭・イベント・同梱カードで反応があるか。 |
| 画像検索経由の流入 | 商品写真やパッケージから探されている可能性があるか。 |
| よく見られる商品 | 海外向けに可能性がある商品はどれか。 |
| 問い合わせ内容 | 購入前の不安や疑問は何か。 |
| 国・地域の傾向 | 対応すべき国や地域のヒント。 |
このデータがあれば、次の判断がしやすくなります。
- この商品は英語ページを増やす価値がある。
- この商品は問い合わせが来る。
- この国からの反応が多い。
- 海外発送を検討してもよい。
- 逆に、まだ越境EC化するほどではない。
このように、インバウンド向けページは、越境ECの前段階としてのテストマーケティングにもなります。
海外広告や海外SEOだけに頼らなくても、店舗、イベント、展示会、SNS、QRコード、同梱カード、画像検索など、すでにある接点を使って小さく検証できるのです。
これは、越境ECを始める前の段階として、かなり現実的な方法だと思います。
日本語ページの直訳だけでは、海外のお客様には伝わりにくい
インバウンド向けページを作るときに気をつけたいのは、日本語の商品ページをそのまま英訳すればよいわけではない、ということです。
日本人向けの商品説明と、海外のお客様向けの商品説明では、知りたいことが少し違います。
日本人なら説明しなくても分かることが、海外のお客様には伝わらないことがあります。
たとえば、
- 素材の意味。
- 産地の価値。
- 職人の技術。
- 季節感。
- 贈り物としての文化。
- 使い方や飾り方。
- 日本の暮らしとの関係。
こうした情報は、日本語ページでは当たり前すぎて省略されていることがあります。
でも、海外のお客様にとっては、そこが魅力になるかもしれません。
つまり、インバウンド向けページでは、単なる翻訳ではなく、少しだけ「説明の前提」を変える必要があります。
日本人には言わなくても分かることを、海外のお客様には短く丁寧に説明する。
ただし、専門的になりすぎる必要はありません。
訪日中にスマホで見るページであれば、長すぎる説明よりも、写真と短い文章で直感的に分かるほうが大切です。
海外でお土産として受け取った方に向けても、まずは「何の商品なのか」「なぜ日本らしいのか」「どこで詳しく見られるのか」が分かれば十分です。
最初のページ構成は、1商品1ページくらいでよい
インバウンド向けページは、最初から大きな多言語サイトにしなくてもよいと思います。
まずは、海外のお客様に伝わりやすい商品を1つ選び、その商品だけの英語ページを作る。
それくらいで十分です。
ページ構成も、シンプルでよいと思います。
| セクション | 内容 |
|---|---|
| ファーストビュー | 商品写真、英語の商品名、短い説明を掲載します。 |
| About | 商品の特徴、日本らしい背景、作り手の情報を伝えます。 |
| How to use / Enjoy | 使い方、飾り方、贈り方を紹介します。 |
| Where to see / buy | 実物を見られる場所・購入できる場所を案内します。 |
| Events / Pop-up | 出展中・出展予定のポップアップ情報を掲載します。 |
| For visitors to Japan | 訪日中に購入・問い合わせする際の案内を入れます。 |
| After returning home | 帰国後の問い合わせ方法を案内します。 |
| For gift recipients | お土産・手土産で受け取った方向けの案内を入れます。 |
| Contact | 問い合わせフォーム、メール、SNSへの導線を置きます。 |
- 「Where to see / buy(実物を見られる場所・購入できる場所)」
- 「Events / Pop-up(出展・ポップアップ情報)」
- 「For visitors to Japan(訪日中のお客様へ)」
- 「After returning home(帰国後のお問い合わせ)」
- 「For gift recipients(お土産・手土産で受け取った方へ)」
- 「Contact(お問い合わせ)」
このように、英語の見出しを使う場合は、日本語の意味も併記しておくと、運営側でも管理しやすくなります。
ここで、いきなりカートボタンを置く必要はありません。
海外発送の体制が整っているなら、購入導線を置いてもよいと思います。
ただ、まだ体制が整っていないなら、無理に販売までつなげず、問い合わせ、来店、SNSフォローに誘導するほうが安全です。
最初は静的HTMLの1ページでもよいと思います。
CMSやECシステムに深く組み込まなくても、主力商品だけのLPとして作れば、小さく始められます。
できることと、まだできないことは正直に書く
インバウンド向けページを作るときは、できることと、まだできないことを分けて書いたほうがよいと思います。
海外のお客様に向けたページを作ると、どうしても「海外対応しています」と見せたくなります。
ただ、まだ海外発送の体制が整っていないなら、無理に購入できるように見せないほうがよいです。
- 海外発送できる商品と、できない商品がある。
- 国によって送料が変わる。
- 配送できない地域がある。
- 破損リスクがある。
- 関税や輸入税は購入者側で発生する可能性がある。
- 返品対応には条件がある。
- 返信には時間がかかる場合がある。
こうしたことを曖昧にしたまま注文だけ受けてしまうと、後からトラブルになります。
だから最初は、次のような案内でも十分です。
「This product is available in Japan.(この商品は日本国内でご購入いただけます。)」
「For overseas shipping, please contact us before ordering.(海外発送をご希望の場合は、ご注文前にお問い合わせください。)」
「International shipping may not be available for all products.(すべての商品が海外発送に対応しているわけではありません。)」
「Shipping fees vary depending on the destination country.(送料は配送先の国・地域によって異なります。)」
「Customs duties and import taxes may be charged separately.(関税や輸入税が別途発生する場合があります。)」
このように、今できることと、個別確認が必要なことを分けて書く。
これは少し消極的に見えるかもしれませんが、最初の段階ではむしろ誠実です。
売れるかどうか分からない段階で、無理に越境ECを完成させる必要はありません。
まずは、問い合わせてもらえる状態を作る。
それだけでも、十分前進だと思います。
やりすぎると、越境ECと同じくらい重くなる
インバウンド向けページは、小さく始められるのが良いところです。
ただし、やりすぎると、結局かなり重くなります。
- 最初から全商品を英語化する。
- 全ページを多言語対応する。
- 自動翻訳で大量ページを作る。
- 海外配送や関税の説明を細かく書きすぎる。
- まだ対応できない国まで購入可能に見せる。
- 問い合わせ対応できないのに、英語で大きく訴求する。
こうなると、インバウンド向けページのはずが、ほとんど越境ECの準備になってしまいます。
最初の目的は、海外のお客様との接点を作ることです。
この割り切りが必要だと思います。
インバウンド向けページは、完成された海外販売サイトではありません。
海外のお客様が商品を思い出し、問い合わせできるようにするための入口です。
この目的を外さないことが大切です。
まとめ:遠くの越境ECより、まず身近なインバウンドを見る
海外のお客様に売りたい。
そう考えると、どうしても遠くの海外市場を見てしまいがちですが、実は、日本にはすでに多くの海外のお客様が来ています。
盲点だったのは、海外客に売りたいなら、まず越境ECを作らないといけないと思い込んでいたことです。
でも、実際には、遠くの越境ECよりも、身近なインバウンド需要というマーケットがあるのです。
- まずは、訪日中の海外のお客様がスマホで見られる英語ページを1枚用意する。
- 商品やブランドの魅力を伝える。
- QRコードで店頭やイベントからつなげる。
- 商品同梱カードで、海外の受け取り手にも公式ページを案内する。
- 画像検索されたときに、公式の英語ページへたどり着ける状態を作る。
- 帰国後にも問い合わせできるようにする。
それだけでも、海外向けの第一歩になります。
越境ECは、海外にいる人へ売る仕組みです。インバウンド向けページは、日本に来た海外のお客様との出会いや、海外へ渡った商品の興味を、次の接点につなげる仕組みです。
海外販売を考えるなら、まずは遠くの海外だけでなく、目の前のインバウンドから始めることもひとつの手段です。
FAQ
Q. インバウンド向けページと越境ECページは何が違いますか?
インバウンド向けページは、訪日中または訪日前後の海外のお客様に、商品やブランドを知ってもらうためのページです。越境ECページは、海外からそのまま購入してもらうためのページです。インバウンド向けページでは、購入機能よりも、商品説明、ブランド背景、問い合わせ導線、再接触できる導線が重要になります。
Q. なぜ越境ECの前にインバウンド向けページを作るのですか?
海外のお客様に売りたい場合、最初から遠くの海外ユーザーだけを狙う必要はありません。日本に来ている海外のお客様は、すでに商品やブランドと出会う可能性があります。その接点を逃さないために、まずインバウンド向けページを用意する意味があります。
Q. 店舗がないD2Cや工房でも必要ですか?
必要性はあると思います。店舗がない場合でも、ポップアップイベント、展示会、委託販売、商品同梱カード、SNSなどを通じて海外のお客様との接点は作れます。むしろ店舗がない分、公式情報にたどり着ける英語ページを用意しておくことが重要になります。
Q. 海外ECがないニッチな商品でも意味がありますか?
意味があります。海外ECがないことは、売り手側から見ると弱点に見えるかもしれません。しかし海外のお客様から見ると、「日本でしか見つけられない特別な商品」として魅力になる場合があります。大切なのは、その興味を受け止める英語ページや問い合わせ導線を用意しておくことです。
Q. Google画像検索やGoogleレンズへの対策にもなりますか?
なると思います。海外のお客様が訪日中に見た商品や、お土産でもらった商品を写真で検索することがあります。そのとき、商品写真やパッケージ写真を掲載した公式の英語ページが見つかれば、商品説明、ブランド背景、問い合わせ先へ自然につなげやすくなります。
Q. 今からインバウンド向けページを作る意味はありますか?
意味はあると思います。2025年の訪日外客数は4,268万3,600人で年間過去最高を更新し、訪日外国人旅行消費額も9兆4,559億円と過去最高になっています。訪日客が増え、消費額も大きくなっている今、海外のお客様が商品やブランドを英語で確認できるページを用意しておくことは、越境ECの前段階としても有効です。
Q. 日本在住の方が海外へ持っていくお土産にも意味がありますか?
意味があります。日本在住の方が海外出張、一時帰国、海外の友人や取引先への手土産として商品を持っていくと、商品そのものが海外の方の目に触れます。そのとき、商品同梱カードやパッケージに英語ページのQRコードがあれば、受け取った方が公式情報にアクセスしやすくなります。
Q. ポップアップイベントでも英語ページは必要ですか?
必要性は高いと思います。ポップアップイベントは期間限定なので、その場で買わなかったお客様との接点が切れやすいからです。商品POP、展示パネル、ショップカードなどにQRコードを置いて英語ページへ誘導すれば、帰国後の問い合わせやSNSフォローにつながる可能性があります。
Q. 最初から英語版ECサイトを作る必要はありますか?
最初から英語版ECサイトを作る必要はありません。まずは主力商品や海外のお客様に伝わりやすい商品だけを選び、英語の紹介ページを1枚作るところからでも十分です。反応があれば、商品数や導線を増やしていく形が現実的です。
Q. 商品ページを自動翻訳するだけでもよいですか?
自動翻訳だけでも最低限の意味は伝わるかもしれません。ただし、海外のお客様には、日本人なら説明しなくても分かる背景や文化的な意味が伝わりにくい場合があります。商品の特徴だけでなく、使い方、産地、職人性、日本らしさ、購入方法などを分かりやすく補足するほうがよいと思います。
Q. インバウンド向けページにはカートボタンを置くべきですか?
海外発送や決済、返品対応などの体制が整っているなら、カートボタンを置いてもよいと思います。ただし、まだ体制が整っていない場合は、無理に購入導線を作らず、問い合わせフォームや店舗案内、SNSフォローに誘導するほうが安全です。
Q. QRコードはどこに置くとよいですか?
店舗POP、商品タグ、ショップカード、チラシ、展示会資料、ポップアップイベントの展示パネル、商品同梱カードなどが考えられます。特に日本語の商品名が読みにくい場合、QRコードから英語ページへ誘導できると、海外のお客様があとで商品を思い出しやすくなります。
Q. インバウンド向けページはSEOにも意味がありますか?
意味はあると思います。英語の商品名、ブランド名、地域名、イベント名などで検索されたときに、海外ユーザーがたどり着ける場所になります。ただし、最初から大きなSEO効果を狙うというより、店頭・SNS・QRコード・画像検索からの受け皿として作り、少しずつ検索にも強くしていく考え方が現実的です。
海外向け対応を小さく始めたい場合は
海外のお客様に向けて販売を広げたいと考えたとき、最初から大きな越境ECサイトを作る必要はありません。
まずは、訪日中の海外ユーザーに向けた英語ページを1枚用意し、商品やブランドの魅力を伝えるところから始める方法もあります。
また、ポップアップイベント、展示会、店頭POP、商品同梱カード、海外へのお土産・手土産など、すでにある接点から英語ページへ誘導するだけでも、海外向けの小さな一歩になります。
店舗を持たないD2Cブランドや工房、海外ECではまだ見つけにくいニッチな商品ほど、「日本で見つけた特別な商品」として伝えられる可能性があります。
EC Creators Lab.では、EC-CUBEやShopifyを前提とした越境ECの検討だけでなく、主力商品だけを対象にした英語ページ、問い合わせ導線、インバウンド向けLPの設計もご相談いただけます。
「いきなり越境ECまでは重いけれど、海外向けの反応は見てみたい」
そんな段階からでも、お気軽にご相談ください。