AI時代に変わり始めたECサイトの購買行動
ChatGPT、Gemini、Perplexity、Google AI Overviewなど、ここ1〜2年で、「AIに相談しながら商品を探す」という行動が急速に増えてきました。
以前のECでは、
という流れが一般的でした。
しかし現在は、
という流れに変わり始めています。
つまり今後は、「検索順位を上げる」だけではなく、「AIに理解され、比較され、引用される」ことも重要になっていく可能性があります。
海外ではすでに、
といった概念も登場し始めています。
ただし、ここで重要なのは、「SEOの次はGEOだ!」という単純な話ではありません。本当に変わっているのは、「人間の購買行動」です。
今回は、EC運営の実務視点から、
- 候補商品を見つける
- 商品を比較する
- どのショップで買うか比較する
という「EC流入3段階モデル」で、AI時代のECサイトに必要な情報設計について考察してみます。
海外ではすでに「AI検索最適化」の研究が始まっている
海外では、生成AI向けの情報最適化研究が始まっています。代表的なのが、Princeton大学系研究チームによる「GEO(Generative Engine Optimization)」です。
訳:生成エンジン最適化
生成AI回答内でWebコンテンツの可視性を高めるためのGEO概念と評価指標を提案した研究論文。
この研究では、GEOを「生成エンジンにおけるウェブコンテンツの可視性を高めるための最適化」として提案しています。論文では、GEO施策によって生成AI回答内での可視性が最大40%向上したとされています。
ただし、この点は慎重に読む必要があります。これは単純に、「Google検索順位が40%上がった」という意味ではありません。研究内では、生成AIの回答内でどれだけ目立つか、どれだけ引用・参照されやすくなるか、という観点で評価されています。つまり、従来のSEO順位とは異なる指標です。この違いを理解せずに、「GEOをやれば検索順位が上がる」と受け取ってしまうと、少し誤解が生まれます。
また、ShopifyもGEOに関する記事を公開しており、AI検索・AI発見時代において、SEOの基礎、ブランド権威性、AIが利用しやすいデータ品質が重要になると説明しています。
訳:GEO実践ガイド:AIによる発見に最適化する方法と理由
AI経由の商品発見に備え、SEO基礎、ブランド権威性、データ品質をどう整えるかを整理した実務ガイド。
訳:EC向けGEO:AIからストアへの流入を増やす方法
AI検索エンジンの仕組みと、ECサイトがAI経由の流入に備えるためのGEO/AEO施策を解説した記事。
さらにPerplexityは、AI検索結果内で商品カードを表示したり、米国のProユーザー向けにAI検索結果から商品購入できる機能を提供し始めています。
訳:PerplexityのAI検索エンジンが商品購入まで代行できるように
Perplexityが商品カードやBuy with Proにより、AI検索結果内で購入まで進められる機能を導入したことを伝えるニュース。
このように海外ではすでに、「AIに検索される」だけではなく、「AIに比較される」「AI経由で購入される」ことまで見据えた議論が進み始めています。
GEO/AIO/LLMOはまだ発展途上
しかしながら、現在のGEO/AIO/LLMO界隈は、まだSEOほど確立された理論ではありません。実際、海外のレポートや論文を読むと、「SEOとの違いは何なのか?」が曖昧なケースも少なくありません。
たとえば、
- FAQを書く
- 情報を整理する
- 権威性を出す
- 比較しやすくする
- 構造化データを整える
といった内容は、従来のSEO対策やE-E-A-T(Googleの品質評価ガイドライン)ともかなり重なります。
また、一部の研究やレポートでは、「Google検索順位」ではなく、「AI回答内でどれだけ引用されたか」を比較しているケースもあります。つまり、「これをやればAI検索で勝てる」という完全な正解が、すでに存在しているわけではありません。
最近では、「AI引用ランキング」や「AI可視性レポート」のような調査も増えていますが、調査条件や定義が不明瞭なケースもあります。
たとえば、
- どのAIを対象にしたのか
- どの質問を使ったのか
- 何件調査したのか
- “引用”をどう定義したのか
が明確でない場合、その結果は参考情報として慎重に扱う必要があります。
ただし一方で、
- AI要約
- AI比較
- AIとの対話型検索
- Google AI Overviewでの追加質問
- AI検索結果内での商品推薦
が増えていることは紛れもない事実です。
つまり今後重要なのは、「AIアルゴリズム攻略」だけではなく、「AIが理解・比較・引用しやすい情報をどう整理するか」なのではないでしょうか。
AI時代のEC流入は「3段階」で変わる
私は、AI時代のEC流入は、次の3段階で整理できると考えています。
EC流入3段階モデル
従来のSEOでは、「検索順位」が中心でしたが、AI時代では、「AIの意思決定空間に存在できるか」が重要になっていく可能性があります。
ECサイトはこれまで以上に、
- 商品を見つけてもらうための情報
- 商品を比較してもらうための情報
- 最後に購入先として選ばれるための情報
を分けて考える必要があります。
次のステップでは、上記のAIによるEC流入の3段階モデルに沿って、ECサイト側からはどのような対策を行えば良いのか?を考えてみましょう。
第1フェーズ:候補商品を見つける 〜AIに“発見”される〜
最初の段階では、ユーザー自身もまだ商品を決めていない段階で、AIに相談が始まります。
たとえば、
- 初心者向けの高級炊飯器
- 狭い部屋向けのデスク
- 海外富裕層向けの和モダンギフト
- 長時間疲れにくいイヤホン
など、かなり曖昧な状態です。
この段階でのAIは、「要件整理役」として機能します。ユーザーが、「自分には何が合うのか」「どんな商品ジャンルを探せばよいのか」をAIに相談するようになります。
つまり、この段階で重要なのは、
- 誰向けなのか
- どんな悩み向けなのか
- どんなシーン向けなのか
- どんな価値観に合うのか
- どんなライフスタイルに合うのか
といった「意味情報」です。
ここで重要なのは、単なるSEOキーワードではありません。AIは、「どんな人に、どんな価値があるのか」を理解し始めています。
そのため、
- 用途別提案
- 初心者向けページ
- シーン別分類
- ブランドコンセプト
- 世界観の言語化
- 商品カテゴリ整理
などが、AI時代ではさらに重要になる可能性があります。
ニッチ商品はAI時代にチャンスがある
特に面白いのは、ニッチ商品やオリジナル商品の可能性です。こういった商品は従来のSEOでは需要が少なく「検索されない商品」と見なされ、なかなか見つけてもらえませんでした。しかしAIは、「曖昧なニーズ」を理解し始めています。
「和モダンで、海外富裕層向けギフトとして映えて、職人性を感じられるインテリア」
のような、文脈検索にも対応し始めています。
このような検索では、単純な商品名や型番だけではなく、
- 世界観
- コンセプト
- 文化背景
- ブランド哲学
- 利用シーン
- どんな人に向いているか
といった情報が重要になります。
つまり今後は、「商品名で検索される」だけではなく、「意味や文脈で発見される」可能性が高まっていきます。特にオリジナル商品やニッチ商品を扱うECサイトでは、商品ページだけでなく、ブランドストーリー、用途提案、選び方ガイド、導入事例などを通じて、商品が持つ意味を丁寧に言語化しておくことが重要になります。
第2フェーズ:商品を比較する 〜AIに“商品比較材料”として引用される〜
次に重要なのが、商品比較フェーズです。ここでは、ユーザーの中に、ある程度の候補商品が出てきています。
たとえば、
- 「AとBの違いは?」
- 「初心者向けはどちら?」
- 「価格差の理由は?」
- 「デメリットは?」
- 「長く使うならどちら?」
といった質問を、AIに投げかける段階です。
以前は、ユーザー自身が比較記事を読んでいました。ブログアフィリエイトなども商品の比較記事はとてもニーズがあるジャンルでした。しかし現在は、AIに直接比較させるケースが増えています。しかもAIは、比較表そのものまで生成してしまいます。
つまり今後は、SEO対策として「比較記事を書けば勝てる」という単純な話ではなくなる可能性があるのです。
AIによる競合比較表への対策
ここは、かなり重要なポイントです。
AIは今後、
- 価格比較
- スペック比較
- レビュー整理
- メリット・デメリット整理
- 用途別の向き不向き
を自動生成できるようになります。つまり、単純な比較表そのものは、AI側で作られてしまう可能性があります。
では、ECサイト側の価値はどこにあるのでしょうか。それは、「比較の判断材料になる一次情報や独自視点」です。
たとえば、
- 実際に使ってみた感想
- 専門家としての選定理由
- 他商品との思想の違い
- 向いているユーザー
- 向いていないユーザー
- 初心者が失敗しやすいポイント
- 価格差の理由
- 長く使ったときの違い
といった情報です。
AIは比較表を作ることはできます。
しかし、「どの観点で比較すべきか」「どんな人にはどちらが合うのか」「なぜこの商品を選ぶ価値があるのか」という判断材料は、ブランド側・販売側が丁寧に発信しておく必要があります。
「比較されない」ではなく「比較された上で選ばれる」
AI比較時代では、ユーザーは、「他の商品と比較して」という前提でAIに質問します。つまり、「比較されないようにする」ではなく、「比較された上で選ばれる理由」を整理する必要があります。
たとえば、
- どんな人向けか
- どんな用途に強いか
- 何が得意で何が苦手か
- 向いていないケース
- 競合商品との違い
- 価格差の理由
- 他商品ではなく、この商品を選ぶ理由
などです。
特に重要なのは、メリットだけでなく、デメリットや向いていないケースも整理することです。AIは、「欠点も含めた情報」を比較材料として扱いやすい可能性があるとも言われます。
つまり、「この用途には向かない」まで書かれているほうが、AIにとっても、ユーザーにとっても、判断しやすい情報になります。その上で、「この用途では群を抜いている」というメリットを強調することで、競合比較にも強くなります。逆に、汎用商品であれば、競合比較される前提で「すべてがベター」であることをウリにすることも良いかもしれません。
これは、従来の「良いことだけを書く商品ページ」とは、かなり考え方が変わる部分です。
AI時代は「一次情報」の価値が上がるかもしれない
最近では、AIが一般論だけの情報を要約してしまう一方で、実体験や一次情報に価値が残りやすいのではないか、という議論も増えています。たとえば、国内でもnoteに書いたブログ記事がAIに引用されやすいという趣旨の動画や考察が話題になりました。
ただし、こうしたAI引用ランキング系の情報については、調査条件や引用の定義が明確でない場合もあるため、過信は禁物です。あくまで参考情報として扱うべきでしょう。
しかし方向性としては、
- 実体験
- 専門家視点
- 長期使用レビュー
- 失敗談
- 比較理由
- 導入プロセス
など、「人間の経験そのもの」の価値は、今後さらに高まる可能性があります。
つまりAI時代では、「比較表を作ること」以上に、「人間にしか語れない経験を持つこと」が重要になってくるのです。
第2フェーズで重要になるコンテンツ
ここまでを踏まえると、商品比較フェーズでは、以下のようなコンテンツが重要になります。
- 商品Aと商品Bの違い
- 用途別のおすすめ
- 初心者向け・上級者向けの違い
- メリット・デメリット
- 選び方ガイド
- 失敗しやすいポイント
- 実際の使用レビュー
- 専門家による選定理由
- 競合商品との違い
- 向いている人・向いていない人
この段階では、主役はまだ「商品」です。ユーザーは、「どの商品が自分に合うのか」を知りたいのです。
そのため、第2フェーズでは、「当店で買ってください」よりも先に、「この商品はどんな商品なのか」「他の商品と何が違うのか」「どんな人に向いているのか」を丁寧に整理することが重要です。
第3フェーズ:どこで買うか比較する 〜AIに“安心して買えるショップ”として認識される〜
最後に重要になるのが、ショップ比較フェーズです。
ここでは、ユーザーはすでに、「欲しい商品」または「かなり有力な候補商品」を見つけています。その上で、「どこで買うのが一番よいか」を比較する段階です。
ここで比較されるのは、商品ではありません。比較されるのは「ショップ」です。
たとえばユーザーは、AIに対して、
- 「この商品はAmazonで買うのと公式サイトで買うの、どちらがいい?」
- 「保証がしっかりしているショップは?」
- 「正規品を安心して買えるのはどこ?」
- 「返品対応が良いショップは?」
- 「サポートがある販売店は?」
といった質問をする可能性があります。
つまり第3フェーズでは、「商品の比較」ではなく、「購入先の比較」が行われます。
Amazonにある商品はショップ比較で厳しくなる
AI比較時代では、Amazonにも売っている既製品は、特に厳しい競合比較にさらされる可能性があります。ユーザーがAIに「この商品はどこで買うのが良い?」と聞く場合には、
- 価格
- レビュー数
- 配送速度
- 知名度
- 購入のしやすさ
などの面で、Amazonが有利に見えるケースは少なくありません。
つまり、「同じ商品を、ただ並べているだけ」のECサイトは、ショップ比較でも埋もれやすくなるのです。
価格以外の「安心材料」が重要になる
しかし、だからといって、すべてが価格競争になるわけではありません。ユーザーは価格だけでなく、
- 保証
- サポート
- 正規販売
- 返品対応
- 修理対応
- 問い合わせ対応
- 専門性
- 実績
- ギフト対応
- 法人対応
などもAIに相談しながら比較する可能性があります。特に、高単価商品や専門性の高い商品では「少し高くても安心できるショップで買いたい」という判断が起こります。
AIが購入先を比較する時代になれば、「最安値はA店ですが、保証やサポートを重視するならB店も候補になります」というような回答が生まれるかもしれません。そのとき、B店として認識されるためには、保証やサポートの情報がAIにもユーザーにも分かりやすく整理されている必要があります。
第3フェーズで重要なのは「安心材料の見える化」
ここで重要なのは、「当店で買えば安心です」という曖昧な情報では不十分です。AIに認識させるには明確な情報として「なぜこのショップで買うと安心なのか」を明確にすることが必要になってくるでしょう。
たとえば、
- 正規代理店である
- メーカー保証が受けられる
- 独自保証がある
- 専門スタッフが相談に乗る
- 修理やメンテナンスに対応している
- 問い合わせ窓口が分かりやすい
- 法人導入実績がある
- レビューが豊富
- 運営会社情報が明確である
といった情報です。
AIがショップ比較をする時代になれば、こうした情報も比較材料になる可能性があります。
AI時代は「小さくても、ていねいなEC」が強くなるかもしれない
これは、個人的にかなり大きな変化だと思っています。
以前は、
- ドメインパワーによるSEOの強さ
- 広告費用をかけた認知度とアクセス数の獲得
- 大量仕入れ、大量販売による価格の安さ
といったことができる大手サイトが、圧倒的な有利な状況でした。
しかし今後は、
- 専門サポート
- 正規代理店
- 保証制度
- 修理対応
- 実績
- 問い合わせ品質
- 返品ポリシーの明確さ
- 地域性や人柄による信頼感
- 運営会社の透明性
なども、AIの比較材料になる可能性があります。
小さなECサイトでも、こういった内容を、1ページ1ページていねいに書いているサイト、つまり「ちゃんと運営している会社」の価値が、今後さらに可視化されるかもしれません。
もちろん、価格比較は避けられません。資金力や規模の優位性もあるでしょう。しかし、価格以外の判断材料をきちんと整備しておくことで、「最安ではないが、安心して買えるショップ」として選ばれる可能性があります。
AI時代のECサイトは「商品棚」ではなく「意思決定支援」へ
ここまで見てきたように、AI時代のECでは、「検索順位を取る」こと以上に、「ユーザーの意思決定を助ける情報」が重要になっていく可能性があります。整理すると、次のようになります。
第1フェーズ:発見
AIに候補商品として発見されるために、
- 用途
- 世界観
- シーン
- ターゲット
- 価値観
- 商品カテゴリ
- ブランドコンセプト
を整理する。
第2フェーズ:商品比較
AIに商品比較材料として引用されるために、
- 競合商品との違い
- メリット・デメリット
- 向いている人
- 向いていない人
- 価格差の理由
- 専門家視点
- 実体験
を整理する。
第3フェーズ:ショップ比較
AIに安心して買えるショップとして認識されるために、
- 保証
- サポート
- 正規販売
- 返品対応
- 修理対応
- 実績
- 問い合わせ体制
- 運営会社情報
を整理する。
よくある質問
GEO/AIO/LLMOは、従来のSEOとは別物ですか?
完全に別物というより、SEOと重なる部分が多い発展途上の考え方です。重要なのは、検索順位だけでなく、AIが理解・比較・引用しやすい情報を整理する視点を持つことです。
ECサイトでは、まず何から整備すべきですか?
まずは、誰向けの商品なのか、どんな用途や悩みに合うのか、他商品と何が違うのかを整理することが重要です。商品名やスペックだけでなく、意味や文脈を伝える情報が必要になります。
Amazonでも販売している商品は、自社ECで不利になりますか?
価格や配送速度では不利になる場合があります。ただし、正規販売、保証、専門サポート、返品対応、ギフト対応などの安心材料を明確にすれば、価格以外の理由で選ばれる可能性があります。
AI時代でも、ブログ記事や比較コンテンツは必要ですか?
必要です。ただし、一般論だけの記事ではなく、実際の使用感、選定理由、向いている人・向いていない人、価格差の理由など、AIにもユーザーにも判断材料として伝わる一次情報を含めることが重要です。
まとめ
AI時代のEC最適化は、単なるSEOテクニックではありません。本質は、「ユーザーが商品を探し、比較し、購入するまでの意思決定をどれだけ支援できるか」にあります。
つまり重要なのは、
- 発見される情報
- 商品比較される情報
- ショップ比較される情報
を、それぞれの段階に合わせて整理し、積極的にAIに情報提供することです。
AI時代は、「AIに好かれる裏技」を探す時代ではなく、「人間にもAIにも理解されやすい情報設計」が重要になる時代なのではないでしょうか。
ECサイトは、単なる商品棚ではなく、「ユーザーの意思決定を支援する情報拠点」へと変わっていく。これが、EC運営の実務視点から見た、AI時代のECサイト最適化の本質だと考えています。
AI時代のECサイト情報設計を相談する
EC Creates Lab.では、SEO設計だけでなく、AIに理解されやすい商品情報の整理、カテゴリ設計、比較コンテンツ設計、ショップの安心材料の見える化まで、ECサイト全体の情報設計をサポートしています。
「AI時代にどんな情報を整えるべきかわからない」「商品比較やショップ比較で選ばれる理由を整理したい」「GEO/AIO/LLMOを見据えたECサイト改善を進めたい」
そのような段階でも問題ありません。まずはお気軽にご相談ください。